わたしのステーション

キッチンが基地になるとき

2021.9.27

      

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はらむらようこさんの暮らしの中から、整えていること、すっきりしたこと、そして気持ちがほっとしたこと、ときには新しい発見をみつけたことなど普段の暮らしで大切にしているエピソードを毎月ちょっとずつご紹介します。


-No.9-

キッチンが基地に


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1.娘が中学生になるということは...


この春に一人娘が中学生になりました。
「中学生の母」の暮らしとはどんなものかと思っていたら、すっかり自分で身の回りのことができるようになっている上に、毎日のように習慣になっていた習い事の送迎や、学校からの連絡帳の確認などが一気に激減しました。

娘の成長に万々歳しながらも、たった一つ大きく変わったこと、
それが毎日のお弁当つくりです。

2.ドキドキ、毎日弁当のプレッシャー


小学生の時は、遠足などの半年に1.2度程度のお弁当作りで、どちらかというと楽しみでした。しかし、慣れない中学生生活でやっと一息つくランチタイムと思うと私も気合が必要です。しかも、毎日作る・・・。暗い顔で「弁当 おかず」とネット検索する日々を見て、突然「弁当俺作ろうかな」と夫が言い出したのです。

それこそ半年に1度、気が向いた時に作る夫の手料理は『俺の好きな肉のおかず1品』のみ。夕食がスペアリブの煮込みだけでも達成感ありのご様子で、慌ててわたしがご飯を炊いてギリギリ間に合わせることも・・・それでもやってくれる方だと感心していました。

3.まずは、何もやらないということ


今までは、夫がキッチンに立つことがあるとわたしは先回りして、段取り良くなるように動き回っていました。

結婚し22年が経ちます。人生の半分以上を夫と年月を重ね、もう知らないところはないと思っていました。
お弁当を作るという意外な発言に驚きつつも応援したくなりました。わたしが自分に課したことは、ただ1つ、「何もしない」でした。夫がキッチンに立っている間は「お腹減った」と「おいしい」と言う以外は彼が何時間もキッチンに立っていても、わたしは寝そべって本を読んでいることにしました。さらに、大量に買った食材が残ってしまうのも、汚れていくキッチンのことも一切何も言わず手も出さないことにしました。

4. 夫の腕前がどんどん、いきいき


お弁当作りをスタートして、すぐに様々なことに変化があらわれました。彼がいきいきし始めたのです。食材の買出しは中でも張り合いがあるようで、大きなリュックをパンパンにして帰ってきます。「今週は蛸が安かった!しかも明石だこやで!」と、さながら狩人の様です。合間にランチや夕食も作ってくれるようになりました。壁に広がったトマトソースのしみにも気が付いたようで、わたしの買わないタイプの洗剤を買い込み掃除もしてくれるようになりました。料理のレシピを聞いてくるようになり、レシピを検索していたり、作るものはどんどんおいしくなりました。わたしは「人生№1春巻き」や「店出せる」など誉め言葉のレパートリーと体重を増やしていきました。わたしは彼がこんなにお料理が上手だとは知りませんでした

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5. 母の味


彼の得意としていた豚の角煮やスペアリブの油ギトギト系のザ男飯は一切影を潜め、意外にも今のレパートリーは、日持ちがする彩り豊かなお惣菜でした。保存容器に整然と詰めること、多種類を少しづつ作ること、だしはたっぷり目に仕立てることなど、それら全てがどこかで会ったような懐かしい感じがありました。

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弁当箱に詰めることだけはわたしの役目になりました。毎朝うっとりしながら詰めているうちに、はっと、これはお母様のお料理だと気が付きました。作る料理も、味も、保存の仕方も、買物から帰ったらすぐ調理し、ずっとキッチンにいる姿までもそっくりなことに大変驚きました。

夫の実家に帰省するたびに、お料理上手なお母様の作るものが楽しみでキッチンに張り付くわたしをよそに、夫はキッチンには近寄らず、食後にごちそうさまを言うくらいだったからです。
お母様の味や姿をしっかり感じていたのだと感動しました。手料理や愛が繋がっていることを夫のお弁当作りを通して改めて感じることができました。

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料理上手のお母様が毎年作って送ってくれるジャムと栗の渋皮煮
同じようなものしか作れず、自分の料理を恥ずかしく思っておりましたが、だからこそ記憶に残るし、しんどい時の簡単料理でも、きっといつか成長した子どものしんどい時をも救うことになるでしょう。夫からお母様の手仕事を感じたように、わたしの味をきっと、片隅でも娘の助けになる時がくるのでしょう。日々追われてしまう料理を、そんな風にわたしも肯定したいと思いました。station_0927_f.jpg

6. わたしと娘におこった変化は


男子が厨房に立つことを申し訳なく思うために、気を遣って、段取り良くサポートしているつもりでした。結局は彼に指示し思考停止させ、料理はしんどいものだと刷り込んでいたのだと気が付きました。
土日にキッチンを生き生きと独占する夫を見ると、罪悪感どころか、羨ましい気持ちにすらなります。食い意地の張ったわたしは料理が好きですが、料理時間は心落ち着く瞑想的な素敵な時間でもあったことに気が付きました。わたしがキッチンを独占できる平日夜は、お料理できることを貴重にすら感じています。作った料理を食べてもらうことは幸せな仕事だと、より強く思えるようになりました。
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そして、いつの間にか「わたしも手伝わないと。」という焦りは消え、いきいきと料理する夫を微笑ましく見ていられるようになっていました。
娘は「お弁当はパパが作っていると友達に言うとびっくりされる」と楽しげに夫に報告しています。将来、使命感なしに、お料理することを純粋に楽しめる大人になって欲しいです。
手料理の素晴らしさを知った今、逆に忙しい時しんどい時は他に頼ることも心軽くできるようになりました。冷凍食品があっても助かったと笑う母をしっかり娘に見てもらいたいです(笑)

7.我が家流の記憶


子どもの頃、年に1.2度程度の母のいない日曜の昼間に、父が作る野菜炒めをのせたインスタントラーメンが好きでした。子どもには多すぎる黒コショウと、ラーメンの上にこんもりとよそわれた野菜炒め。多すぎて食べづらくこぼしながら食べることも、楽しいものでした。 母が毎日作ってくれる美味しい安心の味と、父のラーメン。わたしにも二人のお料理が記憶され心温まる思い出になっています。祖母の味も、母の味も、父の味も知っていることで、自由と楽しみが広がったと感じます。

8.人を動かしたいときは先に自分が変わること


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夫のお弁当作りは、わたし一人で抱え込んでいたことにも気が付くことになり、幸せを大きく飛躍させてくれました。夫がやりたいと言い始めたこと、わたしは口を挟まず、完全に夫に任せたことも良かったのだと思います。
もし、旦那さまにお料理をしてほしいと思われる方がいれば、なぜ作って欲しいのか理由を紐解くのです。
愚痴ったり、命令したり、指摘したりせずに、ただ単に相談にのってもらうことから始めてみましょう。
我が家は「お弁当」がきっかけで夫のことを新しい一面を見ることができました。家族で料理を楽しめてステイホームも楽しい時間となりました。
料理が得意ではない旦那さまもいらっしゃると思います。洗濯やお掃除など好きな分野で、発見があるかもしれませんね。
この経験でわたしは、手料理が食べてくれた人の心身に残ることを知りました。その日の家事や育児が上手くできなくても、長い目で見ればそれで充分よいと思えました。継続がなによりも素晴らしく、暮らしを味わいながら明日へつなげていきたいと思います。

著書『「好き」から始める暮らしの片づけ』(ワニブックス)
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haramura (1).jpgはらむら ようこさん

生活デザイン研究室 こちらから

整理収納サービスを重ねるにつれ、家くらい自分の本当に好きなコトや物だけにしてあげたいと思いが募る。元デザイナーの経験を活かし、今の本当の「好き」を見つけ出し今へアップデートさせる独自の片づけ論をもつ。

好きな物だけだから自然と片づく。自分がアップデートされ楽しい。とファンが多く、予約の取れないアドバイザーでもある。神戸育ち大阪在住。

「好き」から始まる暮らしの片づけ  ワニブックス社から出版

      
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